米通貨監督庁(OCC)は2026年10月21日、米国のステーブルコイン規制法「GENIUS法」を実施する最終規則を公表した。施行日は2027年1月18日で、同法の実施規則を確定させた連邦の銀行規制当局はOCCが初めてとなる。
この記事のポイント
- OCCがGENIUS法の最終規則を公表。2027年1月18日に施行され、準備資産・償還・資本・監査・カストディなどの基準を定める
- 利回り禁止をめぐり、関連会社や第三者の報酬プログラムを違法と推定する規則案の規定を削除し、個別に審査する方式へ変更した
- 米国銀行協会(ABA)は「議会の意図を損なう」と反発し、ブロックチェーン協会は法文に沿った内容だと評価した
目次
OCCによる最終規則の公表と適用範囲
OCCの発表によると、最終規則の対象はOCCの管轄下にある許可済み決済用ステーブルコイン発行体と外国発行体、そしてOCCの監督下にある事業者による一部のカストディ(資産保管)業務だ。具体的には、国法銀行と連邦貯蓄金融機関の子会社、連邦支店、連邦レベルで承認を受けたノンバンク発行体、一部の州認可発行体、外国発行体が含まれる。
規則の大半は新設の連邦規則集第12編第15部(12 CFR Part 15)に置かれた。準備資産、償還、リスク管理、監査と報告、カストディ、申請手続き、外国発行体の監督、資本と業務継続の備えまでを扱う。資本規制や早期是正措置、手数料などに関する既存のOCC規則も合わせて改正した。(参考: OCC・Bulletin 2026-50 GENIUS Act Regulations: Final Rule)
一方、銀行秘密法(BSA)、マネーロンダリング対策(AML)、制裁関連の要件はこの規則に含まれていない。これらは米財務省と連携した別の規則制定で定める。OCCは同時に、適用免除(ウェイバー)と申請手続きの指針(Bulletin 2026-51)と、週次・四半期の報告様式(Bulletin 2026-52)も公表した。ウェイバーは2027年1月18日から最長12カ月認められる。申請とウェイバー請求の受付開始時期は追って発表するとしている。(参考: OCC・Bulletin 2026-51 Waivers and Application Submission Guidance)
ジョナサン・グールド通貨監督官は声明で「決済用ステーブルコインのイノベーションに向けて、明確で実用的な枠組みを示す」と述べた。準備資産の裏付け、償還、リスク管理について厳格な基準を設けたとも説明している。スコット・ベッセント財務長官は、最終規則が「民間のイノベーションに明確で実用的な土台を与える」と評価した。(参考: OCC・OCC Advances U.S. Digital Asset Leadership with Final Rule to Implement GENIUS Act)
用語の整理
- GENIUS法
- 2025年7月に成立した米国のステーブルコイン規制法。許可を受けた発行体以外による決済用ステーブルコインの発行を禁じ、米ドルなど流動性の高い資産による全額の裏付けと年次監査を求める。
- OCC(通貨監督庁)
- 米財務省傘下で、国法銀行や連邦貯蓄金融機関を監督する当局。
- 利回り禁止規定
- 発行体が、保有・利用・維持の「みを理由として」保有者に利息や利回りを支払うことを禁じるGENIUS法の規定。
- 反証可能な推定
- 反証がない限り、特定の取引を違法とみなす法的な扱い。規則案に盛り込まれていたが、最終規則では削除された。
GENIUS法成立から最終規則までの経緯
GENIUS法は年央までに実施規則を確定させるよう当局に求めていたが、期限を守った規制当局はなかった。CoinDeskとDecryptの報道をもとに、主な動きを日付順に整理する。
2025年7月GENIUS法が成立
2025年後半連邦預金保険公社(FDIC)が申請基準を公表
2026年2月OCCが規則案を公表し、60日間の意見募集を開始(官報掲載は3月2日)
2026年4月FinCENとOFACがAML・制裁関連の規則案を共同で公表。FDICも州認可機関向けの規則案を公表
2026年7月法定の期限を各当局が守れず
2026年8月財務省が自らの規則案を公表。グールド氏は11月までに確定させる方針を表明
2026年9月連邦準備制度理事会(FRB)が加盟銀行の子会社向け規則案を公表。上院ではCLARITY法の手続き採決が不成立
2026年10月21日OCCが最終規則を公表
2027年1月18日最終規則が施行。原則として発行には許可済み発行体としての承認が必要に
(参考: Yahoo Finance(Decrypt)・OCC Finalizes GENIUS Act Stablecoin Rules Ahead of January Deadline)
報酬プログラムの扱いと規則案からの変更点
最も議論を呼んだのは、ステーブルコインの「報酬(リワード)」の扱いだ。GENIUS法は発行体による利息や利回りの支払いを禁じているが、取引所などの第三者が報酬を提供することまでは明示的に禁じていない。CoinDeskによると、現在はPayPalがPYUSDに年4%、Coinbase OneがUSDCに3.75%、Kraken+の会員がUSDGで最大4.5%の報酬を提供している。
OCCの規則案は、関連会社や「関連する第三者」との一定の取り決めが利回り禁止に違反すると推定する規定を設けていた。最終規則はこの推定規定を削除し、個別の事実関係に即して判断する方式に切り替えた。OCCは、利回り禁止が保有を「のみ」の理由とする支払いに適用されることを重視した。少なくとも一部が別の理由による報酬は、禁止の対象外になりうるとの立場だ。(参考: CoinDesk・OCC’s final rule to start fresh in weighing stablecoin rewards against GENIUS Act ban)
ただし、既存の報酬プログラムが自動的に認められるわけではない。OCCは「GENIUS法以前からある報酬プログラムが同法に適合していると推定することはしない」と明記した。The Blockによると、OCC当局者は記者向けの説明で、判断は「個別に」行い、明白な脱法行為には対処しうると述べた。(参考: The Block・First out the gate: OCC debuts final rule implementing Trump-signed GENIUS Act)
規則案からの主な変更点を次の表にまとめる。
| 項目 | 規則案(2026年2月) | 最終規則(2026年10月21日) |
|---|---|---|
| 関連会社・第三者の報酬 | 一定の取り決めを違法と推定 | 推定を削除し、個別に審査 |
| 既存の報酬プログラム | 推定規定の対象になりうる | 適合とは推定せず、特別扱いもしない |
| 準備資産の分散・集中 | 規則案で個別の要件を提示 | 原則ベースへ変更。日次の最低流動性と、単一の取引相手への過度な集中の回避を求める |
| AML・制裁要件 | 財務省と別途 | 引き続き財務省と別の規則で対応 |
OCCは、CLARITY法の審議状況を考慮すべきだとの意見に対し、「同法が成立しない限り、成立したGENIUS法の利回り禁止を実施しなければならない」と答えた。市場は「まだ初期段階」にあるため推定規定は設けないとし、経験を積んだうえで明確化のための規則制定を提案する可能性も示している。
銀行業界と暗号資産業界の反応
銀行業界は強く反発した。米国銀行協会(ABA)のロブ・ニコルズCEOは、最終規則が「地域の貸し出しを守るという議会の明確な意図に反して、暗号資産プラットフォームの現状を温存する」と批判した。さらに「こうした抜け穴は、議会が決済用ステーブルコインと従来の銀行預金の間に引いた区別を損なうおそれがある」と述べ、「預金流出や経済的な損害が起きてから対処するのは誤ったやり方だ」と主張した。(参考: ABA Banking Journal・OCC finalizes stablecoin rule with narrow payment-of-interest prohibition)
銀行側は、報酬付きのステーブルコインに預金が流れ、地域金融機関の貸出原資が減ると訴えてきた。報道によると、銀行政策研究所(BPI)と米独立コミュニティ銀行協会(ICBA)も最終規則を批判した。一方CoinDeskは、ステーブルコインへの関心が高まる中でも銀行預金は増え続けていると指摘している。
暗号資産業界は歓迎した。ブロックチェーン協会は推定規定の削除について「最終規則を法文により近づけた」と評価した。同協会のリンゼイ・フレイザー最高政策責任者は「OCCは議会が作った枠組みを受け、準備資産について明確で実行可能な基準を発行体に示した」と述べた。そのうえで「この明確さによって、イノベーションと競争が進み、ドル建て決済がより多く米国内に戻ってくる」と語った。(参考: The Block・American Bankers Association accuses OCC of undermining Congress with final stablecoin rewards rule)
中立的な立場からは、運用の不確実性を指摘する声もある。TDコーエンのワシントン・リサーチ・グループでマネージングディレクターを務めるジャレット・セイバーグ氏は「裁判所の判断が出るまで、何が許され何が禁じられるのかは曖昧なままで、これはマイナス材料だ」と述べた。2028年の大統領選の勝者が新しい通貨監督官を任命するリスクもあると指摘した。
他の当局の作業とCLARITY法の行方
OCCの規則が対象とするのは同庁の管轄下にある事業者だけで、GENIUS法の全体像はまだ固まっていない。財務省は8月に規則案を示しており、テザーのような外国発行体をどう扱うかに業界の関心が集まっている。FRBの規則案は9月、FDICの州認可機関向け規則案は4月に出たが、いずれも最終化されていない。
報酬をめぐる対立の舞台は議会にも残る。銀行業界はより広い暗号資産市場構造法案であるCLARITY法を通じてGENIUS法の利回り規定を厳しくするよう働きかけてきたが、同法は9月の上院の手続き採決で前進できなかった。(参考: Bitcoin.com News・OCC Finalizes GENIUS Act Rules as Stablecoin Yield Faces Limits)
編集部の見方では、当面の焦点はOCCが既存の報酬プログラムを個別審査でどう判断するかに移ると考えられる(根拠: 最終規則が既存プログラムの適合を推定しないと明記し、取引所などにOCCの承認取得を求めていると報じられているため)。申請受付の開始時期と、2027年1月18日の施行までに各社がプログラムをどう見直すかが、次の確認点となる。
出典
- OCC: OCC Advances U.S. Digital Asset Leadership with Final Rule to Implement GENIUS Act
- OCC: Bulletin 2026-50 GENIUS Act Regulations: Final Rule
- OCC: Bulletin 2026-51 GENIUS Act: Waivers and Application Submission Guidance
- CoinDesk: OCC’s final rule to start fresh in weighing stablecoin rewards against GENIUS Act ban
- The Block: First out the gate: OCC debuts final rule implementing Trump-signed GENIUS Act
- The Block: American Bankers Association accuses OCC of undermining Congress with final stablecoin rewards rule
- ABA Banking Journal: OCC finalizes stablecoin rule with narrow payment-of-interest prohibition
- Yahoo Finance(Decrypt): OCC Finalizes GENIUS Act Stablecoin Rules Ahead of January Deadline
- Bitcoin.com News: OCC Finalizes GENIUS Act Rules as Stablecoin Yield Faces Limits
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言や特定の暗号資産・金融商品の売買を勧めるものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本を失う可能性があります。投資の判断はご自身の責任で行ってください。なお、本記事はAIを活用して作成しています。正確性に努めていますが、内容が事実と異なる可能性があります。重要な情報はご自身で公式・一次情報をご確認ください。


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