Open Standard(オープン・スタンダード)は2026年6月30日、Visa、Mastercard、BlackRock、Coinbaseなど世界140社以上が参画するコンソーシアム(連合体)型ステーブルコイン「Open USD(OUSD)」の設立を発表した。三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、PayPay、楽天グループといった日本企業も名を連ねており、USDTとUSDCが支配してきたステーブルコイン市場に新たな競争軸が加わることになる。
- Visa、Mastercard、BlackRock、Google、PayPay、三井住友FGなど140社超が参画し、単一発行者に依存しない「コンソーシアム型」ステーブルコインを設立。
- ミント・償還の手数料をゼロとし、準備資産収益をパートナー企業に分配するという、既存ステーブルコインとは構造的に異なる経済モデルを採用。
- 発表を受けてUSDC発行元・Circle(NYSE: CRCL)の株価が時間外取引で18%超急落。投資銀行Jefferiesは市場シェアへの影響について慎重な見方を示した。
Open Standardとはどういう組織か
Open Standardは参加企業で構成する取締役会が運営する独立した組織で、単一企業による収益独占を構造的に排除する「共同ガバナンス」を中核に置く。創業CEOに就くのは、Stripeが買収した送金インフラ企業Bridgeの共同創業者Zach Abrams氏だ。
Abrams氏は設立発表に際し、「金融サービスが普及拡大するには、オープンで低コスト、高スループット、そして利用者の利益と整合するデジタル資産が必要だ」と述べ、既存ステーブルコインとの差別化点を明示した。(参考: あたらしい経済・Open USD発表記事)
OUSDの仕組みと特徴
OUSDは米ドルに連動するステーブルコインだが、その経済モデルは従来型と根本的に異なる。企業によるミントと償還の手数料をゼロとし、発行量の人為的な上限を設けない。準備資産から生じる収益(運営コストを差し引いた残りのほぼ全額)はパートナー企業に分配する仕組みだ。
| 項目 | OUSD(Open Standard) | USDC(Circle) | USDT(Tether) |
|---|---|---|---|
| ガバナンス | 参加企業による共同統治 | Circle社が単独管理 | Tether社が単独管理 |
| ミント・償還手数料 | 無料・数量上限なし | 条件により発生 | 条件により発生 |
| 準備資産収益の帰属 | パートナー企業に分配 | Circle社が保持 | Tether社が保持 |
| 対応ブロックチェーン | Solana・Stellar・Base・Polygon等 | 多チェーン対応済み | 多チェーン対応済み |
| 発行状況(2026年7月時点) | 未発行(2026年内に予定) | 発行済み(市場シェア第2位) | 発行済み(市場シェア首位) |
Stripeは参画声明の中で「自社プラットフォームで事業を展開する企業のデフォルトステーブルコインにする」と述べており、EC決済での早期普及を視野に入れているとみられる。(参考: ビットタイムズ・OUSD発表記事)
参加企業の顔ぶれと日本企業の動向
参加企業は決済・銀行・テクノロジー・暗号資産と幅広い業種にまたがる。以下は主な参加企業の分類だ。
決済ネットワーク:Visa、Mastercard、American Express、Discover、Western Union、Stripe
銀行・金融機関:BlackRock、BNY、Standard Chartered、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、BBVA
テクノロジー企業:Google(Alphabet)、Samsung、IBM、Shopify、DoorDash
暗号資産・Web3:Coinbase、Ripple、OKX、Bybit、MetaMask、Aave、Fireblocks、Crypto.com
日本企業:PayPay、楽天グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ
日本からは三井住友FGとみずほFGのメガバンク2行に加え、国内最大規模のQRコード決済PayPayと楽天グループが参画した。PayPayが加わることで、日常の小売決済レイヤーでOUSDが使われる経路が生まれる可能性がある点は注目される。
BlackRockは参画コメントとして「事業体がトークン化された価値にアクセスするうえで、より多くの選択肢を提供する建設的な一歩だ」と声明で述べた。Rippleは「将来の決済はマルチチェーン、相互運用可能、機関投資家向けのブロックチェーン基盤となる」との立場からOUSDへの参加を説明している。(参考: Stablecoin Insider)
既存ステーブルコインへの影響
発表直後、USDCを発行するCircle(NYSE: CRCL)の株価は時間外取引で18%超下落した。市場参加者の間でOUSDがUSDCの直接的な競合になるとの見方が広がったことが背景にある。
投資銀行Jefferiesは2026年7月1日付のリポートで「OUSDの登場がUSDCの市場シェアに与えるリスクは現時点で十分に評価できる段階にない」として、株価下落局面でのCircle株の押し目買いを推奨しない姿勢を示した。アナリストは、参加企業の多くがUSDCの主要な流通チャネルでもあるという構造的な問題点を指摘している。(参考: CoinDesk・Jefferies分析記事)
一方、USDT(テザー)については、主に新興国向けの個人送金やドルヘッジ需要で広く利用されており、企業間決済に軸足を置くOUSDとは競合する市場帯が異なるとの見方もある。ただし、OUSDが将来コンシューマー向けユースケースに拡張した場合は、テザーとの競合が生じる可能性も残る。
今後のスケジュールと課題
OUSDのローンチは2026年内を予定しているが、具体的な開始日は2026年7月2日時点で公表されていない。初期対応ブロックチェーンはSolana、Stellar、Base、Polygonが予定されており、その後段階的に拡張するとしている。
- ステーブルコイン
- 米ドルなど法定通貨の価値に連動するよう設計された暗号資産。1トークン=1ドルの価値を維持する仕組みで、決済・送金・DeFiの基盤として広く利用されている。
- コンソーシアム型ガバナンス
- 単一の発行者が意思決定を独占するのではなく、複数の参加企業で構成する委員会が運営する形態。Open StandardはUSDT・USDCの単一発行者モデルへの対抗軸として訴求している。
- GENIUS法(2025年成立)
- 米国の連邦ステーブルコイン規制法。発行者に準備資産の1対1維持と定期的な開示を義務付けており、Open StandardはこのGENIUS法への準拠を前提にOUSDを設計している。
140社以上が参画するコンソーシアム運営は、将来的に参加企業間の利害対立というリスクも内包する。手数料体系の変更、準備資産の運用方針の転換、特定チェーンへの優遇措置などを巡り、企業間の調整が難航する場面も想定される。
規制面では、米議会で審議中のCLARITY法(デジタル資産市場明確化法)の動向も注視する必要がある。同法が成立すれば、ステーブルコインを含むデジタル資産市場全体の規制枠組みが一段と明確化され、OUSDのような新規参入者にとっても事業計画の前提条件が固まる。政策アナリストの間ではCLARITY法の2026年内成立を42〜48%の確率と見積もる声もあり、夏以降の議会動向が市場の焦点になりそうだ。(参考: CoinPaper・Open USD記事)
出典
- あたらしい経済「オープンスタンダード、Visaやストライプら140社超参画のステーブルコイン『Open USD』提供へ」(2026年6月30日)
- ビットタイムズ「収益還元型ステーブルコイン『Open USD』発表|Visaら140社超が参画」(2026年6月30日)
- Stablecoin Insider「Visa, Stripe, Mastercard, and BlackRock Join 140-Plus Partner Consortium to Launch Open USD Stablecoin」(2026年6月30日)
- CoinDesk「Jefferies Warns Against Buying the Dip in Circle as Open USD Raises New Competition Fears」(2026年7月1日)
- CoinPaper「Visa, Mastercard, BlackRock, Ripple, and Coinbase To Launch Joint Crypto Stablecoin」(2026年6月30日)
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