米Coinbase傘下のレイヤー2ネットワーク「Base」とOptimism、Coinbase、WalletConnectの4者は7月17日(現地時間)、イーサリアムの新しいアカウントアブストラクション(AA、アカウント機能の抽象化)標準「EIP-8130」を、すべてのEVM互換ウォレットに広げる共同の取り組みを発表した。テスト環境は同日からデモサイト「vibes.base.org」で公開されている(参考: Crypto Integrated・Crypto News. July 18, 2026)。
この記事のポイント
- Base・Optimism・Coinbase・WalletConnectの4者が7月17日、ネイティブAA標準「EIP-8130」の共同推進を発表。デモサイトで同日からテストできる
- 発表によると、USDC送金のコストは既存標準ERC-4337と比べ63%低い。バンドラーなどの中間インフラを挟まない設計が要因とされる
- Baseは2026年9月予定のハードフォーク「Cobalt」でプロトコルレベルの実装を計画。鍵のローテーションや耐量子認証への対応も掲げる
目次
発表の概要と4者の役割
今回の発表は、イーサリアム本体の改善提案であるEIP-8130を、レイヤー2やウォレットの実装側から先行して普及させる取り組みだ。Baseがネットワーク実装とデモ環境の提供を担い、Optimismが自らのスタックへの対応を、CoinbaseとWalletConnectがウォレット側の対応を進める構図となる(参考: EIP-8130公式サイト)。
Crypto Integratedによると、発表はBase開発を率いるジェシー・ポラック氏らが7月17日にXで明らかにした。同発表では、USDC送金のコストが従来のERC-4337方式と比べて63%低いこと、鍵のローテーション(更新・差し替え)や耐量子性を見据えた認証方式に対応することが示されたという(参考: Crypto Integrated・Crypto News. July 18, 2026)。
なお63%というコスト削減率は現時点では発表側の数値であり、第三者による検証結果は確認できていない。
ERC-4337の課題とEIP-8130提案までの経緯
アカウントアブストラクションは、秘密鍵の管理やガス代の支払いといったウォレットの制約を緩和し、スマートコントラクトのように柔軟なアカウントを実現する技術だ。現在の主流は2023年3月に稼働したERC-4337で、「バンドラー」と呼ばれる外部事業者と「EntryPoint」コントラクトを経由して取引を処理する。
この方式はイーサリアム本体を変更せずに導入できた一方、中間レイヤーを挟む分だけガスコストが上乗せされる課題が指摘されてきた。EIP-8130は、この処理をプロトコル自体に組み込む(ネイティブ化する)ことで中間層を不要にする提案で、Coinbaseのエンジニアであるクリス・ハンター氏が2025年10月14日に起草した(参考: Ethereum Improvement Proposals・EIP-8130)。
経緯
2023年3月 ERC-4337がメインネットで稼働。バンドラー経由のAAが普及し始める
2025年10月14日 Coinbaseのクリス・ハンター氏がEIP-8130を起草(ステータスはドラフト)
2026年2月 BaseがOP Stack Superchainから独自基盤への移行方針を表明と報道
2026年7月17日 4者がEIP-8130の共同推進を発表。vibes.base.orgでテスト公開
2026年9月(予定) Baseのハードフォーク「Cobalt」でプロトコルレベル実装へ
EIP-8130の仕組みと従来方式との違い
EIP-8130は、新しいトランザクションタイプ(EIP-2718形式)と、オンチェーンの「アカウント設定(Account Configuration)」システムを組み合わせる。アカウントは認証方式をあらかじめオンチェーンの検証コントラクトに登録し、ノードは既知のストレージスロットを読むだけで取引の有効性を確認できるため、任意のウォレットコードを実行せずに検証が完了する。EVMへの新オペコード追加は不要とされる(参考: Ethereum Improvement Proposals・EIP-8130)。
起草者のハンター氏はXで「発想は、認証方式をシステムコントラクトに組み込むことだ。プロトコルが既知のストレージスロットを読んで検証する。プログラマブルなアカウント、ガス代の肩代わり、鍵のローテーションといった標準的なAAのユースケースすべてに対応するよう設計した」と述べた(参考: クリス・ハンター氏のX投稿)。
| 項目 | ERC-4337(従来) | EIP-8130(新提案) |
|---|---|---|
| 実装レイヤー | アプリケーション層(EntryPointコントラクト) | プロトコル層(新トランザクションタイプ) |
| 中間インフラ | バンドラーが必要 | 不要 |
| USDC送金コスト | 基準 | 63%減(発表値) |
| 取引の検証 | 実行時にコントラクトで検証 | ノードがストレージ参照で事前検証 |
| 既存ウォレット | — | ERC-4337ウォレットやSafeと後方互換とされる |
ウォレット体験の変化と想定ユースケース
公式サイトは、EIP-8130を「ウォレットとチェーンの間にインフラ層を挟まない、より安価で高速なAA」と説明する。アプリがユーザーのガス代を肩代わりするガススポンサーシップ、USDCなどERC-20トークンでのガス支払い、複数取引の一括実行(バッチング)が、外部インフラなしで利用できるようになるという(参考: EIP-8130公式サイト)。
自動で失効する制限付きの「セッションキー」や、ノンス(取引順序番号)の調整なしに並列で取引を送れる仕組みも含まれる。ゲームや少額決済のように取引頻度が高い用途で、署名の手間とコストを下げる狙いがあるとみられる。
用語の整理
- アカウントアブストラクション(AA): ウォレットの認証やガス支払いの仕組みを柔軟に設計できるようにする技術の総称
- ERC-4337: 2023年に導入された現行のAA標準。外部の「バンドラー」が取引を束ねて処理する
- バンドラー: ERC-4337でユーザーの取引要求を集めてチェーンに送る中継事業者
- ガススポンサーシップ: アプリ運営者などが利用者に代わって手数料(ガス代)を負担する仕組み
- ハードフォーク: ブロックチェーンの基本ルールを変更する大型アップデート
導入スケジュールと今後の論点
Baseは2026年9月に予定するハードフォーク「Cobalt」で、ネイティブAAをプロトコルレベルに組み込む計画だ。ガススポンサーシップやバッチングを後付けの機能ではなく、ネットワークの基盤機能として提供する構想とされる(参考: Crypto Briefing・Base announces upcoming improvements to smart accounts)。
一方、BaseはOP Stack Superchain体制からの段階的な独立を進めているとThe Blockが2026年2月に報じており、今回の発表はその渦中でOptimismと標準策定面の協調を続けることを示した形だ。編集部の見方では、実行基盤では競争しつつ、ウォレット標準では互換性を優先する分業が鮮明になったと考えられる(根拠: 両者が同一標準の推進に名を連ねた今回の発表と、2月の独立方針報道)(参考: The Block・Coinbase-incubated Base network to ditch Optimism for ‘unified solution’)。
残る論点は、イーサリアム本体(レイヤー1)への採用時期だ。EIP-8130のステータスは現時点でドラフトであり、コア開発者コミュニティでの議論はEthereum Magiciansフォーラムで続いている。レイヤー1採用の可否と時期は確定しておらず、当面はBaseなどレイヤー2が先行導入する見通しだ(参考: Ethereum Magicians・EIP-8130議論スレッド)。
出典
- Crypto Integrated「Crypto News. July 18, 2026」
- EIP-8130公式サイト「EIP-8130 — Account Abstraction by Account Configuration」
- Ethereum Improvement Proposals「EIP-8130: Account Abstraction by Account Configuration」
- Crypto Briefing「Base announces upcoming improvements to smart accounts」
- The Block「Coinbase-incubated Base network to ditch Optimism for ‘unified solution’」
- クリス・ハンター氏のX投稿(2026年)
- Ethereum Magicians「EIP-8130: Account Abstraction by Account Configurations」
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