ソラナ(SOL)は2026年10月21日、ネットワーク発足以来使ってきた合意形成プロトコル「TowerBFT」を新方式「Alpenglow(アルペングロー)」に切り替えた。メインネットでのAlpenglowによる合意形成は、エポック1064のスロット459,653,000から始まった。
この記事のポイント
- ソラナは10月21日、TowerBFTを廃止し、新しい合意形成プロトコルAlpenglowをメインネットで稼働した
- 開発元のAnzaは、ファイナリティ(取引確定)を約12.8秒から約150ミリ秒に短縮する設計だと説明している。ただし稼働直後に独立した計測結果は公表されていない
- 投票は取引として記録されなくなり、バリデータは1エポックごとに定額0.8 SOLを支払う仕組みに変わった
目次
Alpenglowのメインネット移行
ソラナ財団の公式ページによると、Alpenglowの機能ゲート(機能の有効化スイッチ)は日本時間10月21日夜、UTCで13時36分ごろのエポック1064開始時に有効になった。その後もネットワークは安全のため5,000スロット(約18分)だけTowerBFTで動き続けた。
移行の起点となる「ジェネシスブロック」はスロット459,652,999で、654のバリデータのうち446の投票で承認された。Alpenglowの合意形成は次のスロット459,653,000から始まり、切り替えにかかった時間は約900ミリ秒だった(参考: Solana・Alpenglow)。
Anzaが切り替え完了を告知したのはUTC13時54分ごろだった。ソラナの公式アカウントは「ソラナ史上最大の合意形成アップグレード」と投稿した(参考: Solana Compass・Solana Alpenglow Is Live on Mainnet as Anza Retires TowerBFT at Slot 459,653,000)。
TowerBFTは2020年3月のメインネット公開から使われてきた。合意形成の中核を入れ替えるのは今回が初めてとなる。一方、ソラナ仮想マシン(SVM)、取引、プログラム、手数料はこれまでと変わらず、一般ユーザーやアプリ側の対応は必要ないと財団は説明している(参考: The Block・Anza’s Alpenglow goes live on Solana, cutting finality to 150 milliseconds)。
Votorの仕組みとTowerBFTとの違い
今回稼働したのは、Alpenglowの第1段階にあたる投票プロトコル「Votor」だけだ。ブロックデータを配る仕組み(現行のTurbine)を置き換える第2段階「Rotor」は、まだ導入時期が決まっていない。
TowerBFTでは、バリデータの投票そのものを取引としてブロックに書き込み、32スロット分の投票がたまるとブロックが確定していた。Votorでは、バリデータが投票を直接やり取りし、「証明書」にまとめて1〜2回の投票で確定させる(参考: Incrypted・Solana to Activate Biggest Mainnet Upgrade in Network’s History on October 21)。
| 項目 | TowerBFT(従来) | Alpenglow(Votor) |
|---|---|---|
| ファイナリティ | 約12.8秒(Anzaの基準値) | 約150ミリ秒(目標値) |
| 投票の扱い | 取引としてブロックに記録 | ブロック外で直接やり取りし、証明書にまとめる |
| 確定までの手順 | 32スロット分の投票の積み上げ | ステーク80%の賛成で1回で確定。届かなければ60%基準で2回目 |
| 耐障害性 | — | 悪意あるステーク20%+停止中のステーク20%まで耐える |
| バリデータの費用 | 投票手数料(1エポック約1 SOL) | 定額0.8 SOL/エポック(VAT) |
(出所: ソラナ財団「Alpenglow」ページ、Solana Compassをもとに編集部作成)
Solana Compassによると、10月14日から20日の週は投票取引が1日約2億6,300万件あり、ソラナの処理量の約62%を占めていた。非投票の取引は1日1億4,500万〜1億7,500万件だった。投票がブロックの外に出たことで、その分の容量がユーザーの取引に回る見通しだ。
発表から稼働までの経緯
2025年5月Anzaが Alpenglow の設計を公表
2026年5月コミュニティのテストクラスタで初めて新しい合意形成を稼働
2026年7月8日投票アカウントのBLS公開鍵管理(SIMD-0387)がメインネットで有効化
2026年7月22日バリデータ参加チケット(VAT、SIMD-0357)がメインネットで有効化
2026年9月24〜25日テストネットとデブネットでAlpenglowへ移行
2026年10月9日スロット時間を400ミリ秒から200ミリ秒に短縮する4段階の計画が完了
2026年10月21日メインネットでAlpenglow(Votor)が稼働
Anzaは10月13日、「準備は整った。Alpenglowは10月21日水曜日にメインネットベータで稼働する」と告知していた。設計の公表から稼働まで18か月足らずで、稼働前にはレッドチーム演習、ペネトレーションテスト(侵入試験)、移行の反復リハーサル、セキュリティコンテストを行ったとThe Blockは伝えた。
バリデータと開発者への影響
費用の仕組みは大きく変わった。TowerBFTでは、バリデータは投票取引の手数料として1エポックあたり約1 SOLを支払っていた。Alpenglowではこの手数料がなくなり、代わりに「バリデータ参加チケット(VAT)」として1エポックごとに定額0.8 SOLが投票アカウントから焼却(バーン)される。
VATは1エポック前払いで、最初の徴収はエポック1064の開始時に行われ、エポック1065の分にあてられた。残高が足りないバリデータは、次のエポックで投票もブロック生成もできず、そのエポックの報酬を受け取れない。
移行には、Agave系クライアント(Agave、Jito-Solana、Harmonic Salsa)のバージョン4.3.2が必要だった。ジャンプ・クリプトが開発するFiredancerとFrankendancerは移行時点では対応しておらず、Solana CompassによるとFiredancerは26.10版でAlpenglowに対応した。10月19日時点の集計(Pumpkin’s Pool)では、ステークの45%が「準備未完了」とされていた。
データを扱う開発者には影響がある。投票取引がブロックに載らなくなったため、取引件数やTPS(1秒あたりの処理件数)は見かけ上大きく減る。実際の利用が減ったわけではないが、移行前後の数字は比べられない。1つのスロットに複数の候補ブロックが入りうるようになったため、ブロックデータを受け取るサービスは新しい「bank_id」フィールドに対応する必要がある。
用語の整理
- ファイナリティ: 取引が覆らない状態として確定すること、またはそれまでにかかる時間
- エポック: ソラナでバリデータの構成や報酬を区切る期間の単位
- スロット: ブロック生成者に割り当てられる時間の枠。現在は200ミリ秒
- SIMD: Solana Improvement Document。ソラナの仕様変更提案
- Anza: ソラナの主要クライアント「Agave」を開発する企業
開発陣の発言と数値をめぐる注意点
AnzaのCEO、ブレナン・ワット氏は「イーサリアムの『The Merge』以来、最大で最も野心的なブロックチェーンのアップグレードだ」と述べた(参考: The Block)。Anzaのリサーチ責任者ロジャー・ワッテンホーファー氏はDecryptに対し「投票の80%が賛成なら、その場で確定する」と仕組みを説明した。
Anzaのリードエコノミスト、マックス・レズニック氏は、ユーザーがまず気づく変化として「確認の遅延が150〜200ミリ秒程度に縮まること」を挙げた。Anzaは、遅延が約150ミリ秒まで縮まれば、ソラナは応答速度でWeb2のインフラと競えるとの見方も示している(参考: DigitalToday・Solana launches Alpenglow on mainnet, aims to cut transaction time by 99 percent)。
ただし、数値の読み方には注意がいる。150ミリ秒はAnzaの目標値で、TokenPostは「メインネットの本番環境では実証されていない」と指摘した(参考: TokenPost・Solana Sets Alpenglow Mainnet Activation for Oct. 21, 2026)。DigitalTodayによると、稼働当日のAlpenglowダッシュボードではファイナリティが6.6秒、処理量が4,721 TPSと表示されていた。ソラナ財団も「実際の性能はネットワークの状況に左右される」としている。
比較の基準も議論がある。12.8秒はスロット時間400ミリ秒の頃の値で、Galaxyはスロット200ミリ秒の条件ではTowerBFTでも約6秒だったと試算している。編集部の見方では、短縮幅はAnzaが示す「99%」より小さくなる可能性がある。それでも、確定時間が秒単位から1秒未満に下がるなら大きな変化だ(根拠: Solana Compassが紹介したGalaxyの試算)。実測値は今後、ダッシュボードやRPC事業者から出てくる見通しだ。
SOLの値動きは落ち着いていた。Crypto.comによると、SOLは稼働当日の21日に約108.80ドルで、24時間比で約2.7%高かった(参考: Crypto.com・Solana Alpenglow Upgrade Live: 150ms Finality, SOL Price)。一方、Crypto News Flashは、21日に109ドルをつけた後、翌日には市場全体の不安から5.2%下げて約103ドルになったと報じた(参考: Crypto News Flash・Solana Price Hits a Wall Just as Alpenglow Finally Arrives)。
Rotorなど今後の開発課題
アップグレードの残りの部分は、まだ日程が決まっていない。ブロックデータの配信を1層の中継に簡素化するRotor、地理を考慮してブロック生成者の順番を決める仕組み(SIMD-0674/0675)、楕円曲線暗号をハッシュベース署名に置き換えて量子計算機への耐性を持たせる研究「Quantumglow」には、いずれも確定した導入日がない。
近い予定としては、2026年12月に予定されるAgave 4.5で、1取引あたりに指定できるアカウント数の上限が64から96に引き上げられる見通しだ。Firedancerの開発陣は、1ブロックあたり6,000万コンピュートユニットの上限を撤廃し、バリデータのハードウェア性能に応じて容量を広げる提案(SIMD-0370)を出している。
当面の焦点は、実際のファイナリティが目標の150ミリ秒にどこまで近づくかと、Firedancer系クライアントを含めた運用が安定するかの2点になる。
出典
- Solana・Alpenglow
- The Block・Anza’s Alpenglow goes live on Solana, cutting finality to 150 milliseconds
- Solana Compass・Solana Alpenglow Is Live on Mainnet as Anza Retires TowerBFT at Slot 459,653,000
- Incrypted・Solana to Activate Biggest Mainnet Upgrade in Network’s History on October 21
- DigitalToday・Solana launches Alpenglow on mainnet, aims to cut transaction time by 99 percent
- TokenPost・Solana Sets Alpenglow Mainnet Activation for Oct. 21, 2026
- Crypto.com・Solana Alpenglow Upgrade Live: 150ms Finality, SOL Price
- Crypto News Flash・Solana Price Hits a Wall Just as Alpenglow Finally Arrives
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