ウェルズ・ファーゴは8月4日、法人・商業顧客向けに「トークン化預金」(銀行預金をブロックチェーン上のトークンとして表現したもの)を2026年秋から提供すると発表した。まず米ドルと英ポンドの交換に対象を絞って開始し、2027年にかけて対象顧客・国・通貨を広げる計画だという。(参考: Wells Fargo「Wells Fargo to Launch Tokenized Deposits for Corporate and Commercial Clients」)
この記事のポイント
- ウェルズ・ファーゴは自社ブロックチェーン上でトークン化預金を発行し、24時間365日の資金移動とスマートコントラクトによる条件付き決済に対応させる。
- トークン化預金はステーブルコインと異なり銀行の預金債務のままで、同行は既存の預金商品と同じ規制上の保護と預金保険(FDIC)の適用対象になると説明している。
- JPモルガン、シティ、バンク・オブ・アメリカを含む米大手行は、決済機関ザ・クリアリング・ハウス(TCH)が運営する共同ネットワークを2027年前半に立ち上げる計画で、過去の銀行コンソーシアムの失敗例から実現性を疑う見方もある。
発表内容と提供開始時期
同行の発表によれば、トークン化預金は自社開発のブロックチェーン基盤上で発行される。行内保有型のカストディアルウォレット、他チェーンとの接続技術、あらかじめ定めた条件に応じて支払いを実行するスマートコントラクトを備える。
ウェルズ・ファーゴの最高財務責任者(CFO)マイク・サントマッシモ氏は発表資料で「トークン化預金により、当行の法人・商業顧客は口座間および国境を越えた資金移動を、より容易かつ迅速に行えるようになる」と述べた。
サントマッシモ氏はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、当初は米ドルと英ポンドの越境決済を対象とし、需要に応じて来年以降に対象国と通貨を広げると説明したと報じられている。(参考: PYMNTS「Wells Fargo Plans to Launch Tokenized Deposits This Fall」)
同行のブロックチェーン決済への取り組みは今回が最初ではない。2019年に行内送金向けの「Wells Fargo Digital Cash」を公表し、その後はHSBCとの間で共有ブロックチェーンを使った外国為替取引の決済も行っている。(参考: CoinDesk「Wells Fargo Joins the Race to Tokenize Wall Street’s Settlement Rails」)
トークン化預金とステーブルコインの違い
用語の整理
トークン化預金: 銀行が受け入れた預金そのものをブロックチェーン上のトークンとして表したもの。法的には従来どおり銀行に対する預金債権であり、預金保険や銀行規制の枠内にとどまる。
ステーブルコイン: 発行体が米ドルなどの価値に連動させて発行するトークン。発行体は銀行とは限らず、裏付け資産の構成や償還条件は発行体ごとに異なる。
ザ・クリアリング・ハウス(TCH): 米大手行が共同保有する決済インフラ会社。リアルタイム決済網「RTP」などを運営する。
ウェルズ・ファーゴは、トークン化預金が既存の預金商品と同じ規制上の保護と預金保険の適用対象になると説明している。裏を返せば、銀行にとっての利点は「預金を自行のバランスシートに残したまま、ブロックチェーンの利便性だけを取り込む」点にある。
その背景には、ステーブルコインが銀行預金の一部を吸い上げるという懸念がある。ステーブルコイン全体の時価総額は2026年8月2日時点で約2,869億ドルと集計されており、うちUSDTとUSDCの2銘柄で約89%を占める。(参考: StableCoin.com「Stablecoin Market Cap」)
| 項目 | トークン化預金 | ステーブルコイン | 従来の銀行送金 |
|---|---|---|---|
| 発行主体 | 銀行 | 民間発行体(銀行以外を含む) | 銀行 |
| 法的性格 | 預金債権 | 発行体への請求権(条件は発行体ごとに異なる) | 預金債権 |
| 預金保険 | 同行は既存預金と同じ適用対象と説明 | 対象外 | 対象 |
| 稼働時間 | 完全展開時は24時間365日 | 24時間365日 | 営業時間・カットオフに依存 |
| 当初の利用者 | 選定した法人・商業顧客 | 個人・法人を問わず幅広い | 口座保有者全般 |
米大手行の共同ネットワーク構想と経緯
今回の発表は単独の商品投入にとどまらない。ウェルズ・ファーゴは、TCHが構築中の共有トークン化預金ネットワークと接続できるとしている。
2019年ウェルズ・ファーゴが行内送金向け「Wells Fargo Digital Cash」を公表。
2026年6月5日JPモルガン、シティ、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴなどがTCH運営の共同トークン化預金ネットワークを2027年前半に立ち上げる計画と報じられる。
2026年7月28日Forbesが過去の銀行コンソーシアムの破綻例を挙げ、構想の実現性に疑問を呈する記事を掲載。
2026年8月4日ウェルズ・ファーゴが単独でのトークン化預金提供を発表。
2026年秋米ドルと英ポンドの交換を対象に提供開始(予定)。
2027年対象顧客・国・通貨を拡大。共同ネットワークは2027年前半の立ち上げが目標。
共同ネットワークには上記4行のほか、BNY、BMO、シチズンズ・ファイナンシャル、フィフス・サード、HSBC、ハンティントン、キーバンク、PNC、リージョンズ、サンタンデール、TDバンク、トゥルーイスト、USバンクが名を連ねると報じられている。最初の利用者として想定されているのは多国籍企業だ。
TCHの最高経営責任者(CEO)デビッド・ワトソン氏はこの計画を「銀行にとって大きな一手だ」と述べ、業界がオンチェーン決済を軸とする「根本的に異なる」将来に直面していると語った。シティのシャーミア・カリク氏は、このネットワークが金融や資本市場における銀行の役割を「事実上固める」ものだとしている。(参考: Unchained「JPMorgan, Citi, BofA, and Wells Fargo Plan 2027 Tokenized Deposit Network」)
過去のコンソーシアム失敗を挙げる懐疑論
一方で、銀行が共同で立ち上げるブロックチェーン決済網が定着した例は少ない。Forbesは7月28日の記事で、HSBCやドイツ銀行、サンタンデールが参加した貿易金融基盤we.tradeが2022年に破綻し、BNYやコメルツ銀行が関わったMarco Poloが2023年2月に破綻、9行が参加したContourも2023年後半に月間数十件規模の処理にとどまったまま閉鎖したと指摘した。
同記事は、Fnalityが1億3,600万ドルのシリーズC調達を経てなお「限定的なパイロット規模」にとどまっている点や、共同ネットワーク参加行のうち2行が競合するFnalityにも出資している点にも触れている。
需要面の指摘もある。バンク・オブ・アメリカのマーク・モナコ氏は、顧客がトークン化預金を求めて「ドアを叩いて待っているわけではない」と認めた。また元米財務次官のネリー・リアン氏は、プライベートブロックチェーン上でのトークン化預金の銀行間決済は「存在しない」と指摘し、単独行の預金トークンが処理する量は米国の大口決済網CHIPSの取引量の0.33%程度にすぎないとされる。(参考: Forbes「America’s Biggest Banks Are Building One Deposit Token. History Is The Hard Part.」)
日本のメガバンクと共同ステーブルコイン
日本でも銀行発のデジタルマネーは動いている。三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3グループは、2026年度中に共同運営のステーブルコインを発行する枠組みを整えると報じられた。基盤にはMUFGとNTTデータが開発したProgmatが用いられるとされる。
Progmatを巡っては、MUFGアセットマネジメントを発行者、三菱UFJ信託銀行を受託者兼トークナイザーとする円建てのトークン化マネー・マーケット・ファンド(MMF)の計画や、トークン化株式の構想も伝えられている。米国の動きが預金そのもののトークン化に向かうのに対し、日本ではステーブルコインと有価証券のトークン化が並行して進む形になっている。(参考: Ledger Insights「MUFG Asset Management plans Yen denominated tokenized MMF in 2026」)
今後の論点
第一に、相互運用性である。ウェルズ・ファーゴの基盤は自社ブロックチェーンであり、他行のトークンとの決済をどう成立させるかはTCHの共同ネットワークに委ねられる。TCHはブロックチェーン基盤の選定を公表しておらず、設計は固まっていない。
第二に、対象範囲だ。当初の利用者は選定された法人・商業顧客に限られ、通貨も米ドルと英ポンドの2つにとどまる。個人顧客への開放や他通貨対応の予定は現時点で示されていない。
第三に、規制との関係である。米国ではステーブルコインの利回り付与を巡る議論が続いており、JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは関連法案の利回り条項に公然と反対したと報じられている。制度設計の帰趨は、預金トークンとステーブルコインのどちらに企業の資金が向かうかに影響しうる。
編集部の見方では、今回の発表の要点は技術ではなく「誰が決済の帳簿を握るか」という点にある。根拠として、ウェルズ・ファーゴが強調しているのは処理速度そのものよりも預金保険と規制上の保護という銀行固有の属性であり、CoinDeskも大手行の動きをステーブルコインによる預金基盤の侵食への対抗として位置づけている。ただし、これは記事執筆時点での解釈であり、実際の資金の動きが確認できているわけではない。
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。暗号資産や関連銘柄への投資には価格変動をはじめとするリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。
なお、本記事はAIを活用して作成しています。正確性に努めていますが、内容が事実と異なる可能性があります。重要な情報はご自身で公式・一次情報をご確認ください。
出典
- Wells Fargo Newsroom「Wells Fargo to Launch Tokenized Deposits for Corporate and Commercial Clients」(2026年8月4日)
- CoinDesk「Wells Fargo to Offer Tokenized Deposits for 24/7 Corporate Payments」(2026年8月4日)
- PYMNTS「Wells Fargo Plans to Launch Tokenized Deposits This Fall」(2026年8月)
- Unchained「JPMorgan, Citi, BofA, and Wells Fargo Plan 2027 Tokenized Deposit Network as Banks Move to Counter Stablecoins」(2026年6月5日)
- Forbes「America’s Biggest Banks Are Building One Deposit Token. History Is The Hard Part.」(2026年7月28日)
- Ledger Insights「MUFG Asset Management plans Yen denominated tokenized MMF in 2026」
- StableCoin.com「Stablecoin Market Cap」


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