米上院は7月4日の独立記念日連休前に、暗号資産の包括的規制法「デジタル資産市場明確化法(以下、CLARITYアクト)」の本会議採決を実施しなかった。成立に必要な与野党間の合意形成が進まず、市場予測サービスPolymarketの可決確率は7月初頭時点で48%と、1か月前の74%から大幅に低下している。上院が8月の夏季休会に入るまでに残された会期日数は約21日間で、共和党の仮想通貨推進派であるシンシア・ラミス上院議員は「休会前に可決できなければ、成立は2030年まで持ち越しとなる可能性がある」と警告した。
この記事のポイント
- 採決の目標とした7月4日連休前を逃し、8月休会前まで残り約21日の会期日数しかない。採決が実現しなければ暗号資産の包括的規制が数年単位で遅れる可能性がある。
- トランプ大統領の暗号資産収入に関する倫理条項の修正で与野党が平行線をたどり、フィリバスター(議事妨害)回避に必要な60票を固めるための民主党票が確保できていない。
- 非カストディアル開発者への適用免除(セクション604)に対し、全米地方検察官協会などの法執行機関が強く反対しており、業界側との妥協点が見つかっていない。
CLARITYアクトとは
CLARITYアクト(H.R.3633、正式名称:デジタル資産市場明確化法)は、米国における暗号資産市場の規制権限を整理することを主な目的とする法案だ。現行では証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の管轄が重複しており、特にビットコイン以外のトークンが「証券」か「商品」かをめぐる法的解釈の対立が事業者にとって大きな障害となっている。
法案が成立すれば、CFTCが「デジタルコモディティ」の現物市場に対して排他的管轄権を持つ一方、投資契約としての性質を持つトークンについてはSECが引き続き管轄する。コードを公開するだけで資産を預からない非カストディアル開発者への適用免除や、取引プラットフォームにおける活動ベースの報酬制度なども盛り込まれている。(参考: CNBC「Crypto industry scores win as Clarity Act regulation bill clears Senate hurdle」)
立法の経緯
(参考: CryptoTimes「CLARITY Act Stalls: Why Senate’s August Recess Puts US Crypto Rules at Risk」)
採決を阻む3つの論点
大統領の暗号資産利益相反と倫理条項
最大の争点は、トランプ大統領個人の暗号資産保有と収入に関する倫理規定だ。トランプ大統領は2026年6月の資産公開で、ファミリー企業を通じたビットコインの保有が5,000万ドル超に達し、暗号資産関連の2025年収入が10億ドル以上に上ることを明らかにした。
この開示を受け、民主党は大統領の暗号資産利益相反を規制する条項の強化を要求した。共和党とホワイトハウスは、倫理規定の執行権限を連邦司法長官のみに限定する代替案を提示した。しかし民主党側は「大統領が任命した司法長官が大統領の違反を調査するのは機能的に循環的だ」と批判し、合意は成立しなかった。フィリバスター回避の60票には、共和党53議席に加えて少なくとも7〜9票の民主党票が必要であり、倫理条項が解決しない限り必要な票数が集まらない状況が続いている。(参考: Yahoo Finance「Senate’s Last-Ditch CLARITY Act Talks Could Decide Crypto’s Fate for the Rest of the Decade」)
開発者保護規定(セクション604)と法執行機関の反対
もう一つの難関が、セクション604で定める非カストディアル開発者の適用免除だ。Coinbase、Uniswap、ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)を含む80社以上が「コードを公開するだけで資産を預からない開発者に登録義務を課すべきではない」と主張し、現行条文の維持を求めている。
これに対し、全米地方検察官協会(National District Attorneys Association)と全米保安官協会(National Sheriffs Association)は「本条項の広範な免除規定は、暗号資産犯罪の捜査・追跡・起訴を著しく妨げる」として反対意見を提出した。業界側と法執行機関側の要求は根本的に相反しており、限られた交渉期間での精密な条文調整が求められている。
ステーブルコイン報酬規定の解釈対立
2025年7月に成立したGENIUSアクト(米ステーブルコイン規制法)は、発行体によるステーブルコイン保有者への利回り付与を制限した。CLARITYアクトは一方で、取引プラットフォームやカストディアンが活動に対応した報酬を提供することを認めている。銀行業界はこれを「事実上の預金金利の迂回ルートで預金保護の趣旨を損なう」と批判し、業界側は「発行体による利回りとは構造的に異なる」と反論している。この解釈の溝もいまだ埋まっていない。
主要人物と各側の立場
| 人物 | 所属・立場 | 姿勢 |
|---|---|---|
| シンシア・ラミス上院議員 | 共和党・仮想通貨推進派 | 積極推進。「失敗すれば2030年まで成立なし」と警告 |
| バーニー・モレノ上院議員 | 共和党・交渉責任者 | 推進派。倫理条項の妥協案を提示したが民主党に拒否された |
| カースティン・ジリブランド上院議員 | 民主党・超党派交渉参加 | 条件付き支持。倫理規定の実効性が確保されれば賛成へ |
| ルーベン・ガレゴ上院議員 | 民主党・超党派交渉参加 | 条件付き支持 |
| マーク・ワーナー上院議員 | 民主党 | セクション604の法執行懸念が解消されなければ反対 |
| ジョシュ・ホーリー上院議員 | 共和党 | 反対予定。消費者保護が不十分との立場 |
| ランド・ポール上院議員 | 共和党 | 反対予定 |
8月休会前が事実上のデッドライン
米上院は例年8月中旬から下旬にかけて夏季休会に入る。7月5日時点で残された会期日数は約21日間とされるが、CLARITYアクト以外にも選挙制度改革法(SAVE法)、インテリジェンス法FISA第702条の再授権、国防権限法(NDAA)などが審議待ちの状態だ。
投資銀行スティフェル(Stifel)のアナリストは「CLARITYアクトが2026年中に成立するには、少なくとも7月末までに上院を通過しなければ見通しは著しく悪化する」と指摘した。ラミス議員は「8月休会を超えれば、同等の法整備は2030年まで待たなければならない可能性がある」と警告する。選挙年を迎える2027年以降は複雑な金融立法が通過しにくい環境になるとの見立てが、この危機感の背景にある。(参考: Startup Fortune「The CLARITY Act has four weeks to pass the Senate or crypto regulation waits until 2030」)
調査会社ギャラクシーリサーチ(Galaxy Research)は成立確率を従来の60%から50%に引き下げた。Polymarketの予測もほぼ同じ水準で推移しており、市場は「五分五分」とみている。(参考: CoinDesk「Clarity Act survival depends on the U.S. Senate getting a lot of non-crypto work done」)
市場・業界への影響
CLARITYアクトの成否は、米国の暗号資産市場の構造そのものを左右する。現行のSEC・CFTC二重管轄は事業者のコンプライアンスコストを押し上げており、特にSECが「ビットコイン以外の多くのトークンは証券だ」との立場を維持する中で、事業者は規制上の不確実性に直面し続けている。
法案が成立すれば、機関投資家や海外事業者にとっての米国市場参入の壁が下がり、SEC・CFTCの管轄重複という構造的な問題が解消される可能性がある。一方で成立が遅れれば、事業者の欧州(MiCA対応市場)、シンガポール、香港への移転傾向が続くとの見方もある。日本の暗号資産交換業者にとっても、米国の規制環境の変化は対米サービス提供の可否に直結しうる問題だ。
法案が上院を通過したとしても、下院通過版との条文調整(両院協議会)と大統領署名という手続きが残る。今後3週間の上院動向が、米国の暗号資産規制の今後数年を決める分岐点となる。(参考: Elliptic「Crypto regulatory affairs: CLARITY Act Senate delay creates uncertainty」)
出典
- CNBC「Crypto industry scores win as Clarity Act regulation bill clears Senate hurdle」
- Yahoo Finance「Senate’s Last-Ditch CLARITY Act Talks Could Decide Crypto’s Fate for the Rest of the Decade」
- CryptoTimes「CLARITY Act Stalls: Why Senate’s August Recess Puts US Crypto Rules at Risk」
- Startup Fortune「The CLARITY Act has four weeks to pass the Senate or crypto regulation waits until 2030」
- CoinDesk「Clarity Act survival depends on the U.S. Senate getting a lot of non-crypto work done」
- Elliptic「Crypto regulatory affairs: CLARITY Act Senate delay creates uncertainty」
免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではありません。暗号資産への投資は価格変動リスクを伴い、元本を保証するものではありません。投資の最終判断は必ずご自身の責任で行ってください。なお、本記事はAIを活用して作成しています。正確性に努めていますが、内容が事実と異なる可能性があります。重要な情報はご自身で公式・一次情報をご確認ください。


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