欧州連合(EU)は2026年7月23日、ロシアに対する第21次制裁パッケージを採択し、HTX(Huobi Global SA)を含む暗号資産関連の14事業者に対してEU域内からの取引禁止を科した。同パッケージでは、個別の事業者ではなく第三国全体の暗号資産サービスを遮断できる法的手段も初めて導入された。
この記事のポイント
- EUは7月23日、第21次対ロシア制裁を採択。暗号資産関連14社を含む218件を指定し、過去4年で最大規模の追加となった。
- 指定された14社はジョージア、パナマ、UAE、マーシャル諸島、キルギス、ベラルーシの6法域に所在し、ロシアの制裁回避の経路として使われたと指摘されている。
- EUは、制裁回避に使われる事業者を抱える第三国について、暗号資産サービスを国単位で禁止できる仕組みを新設した。
目次
第21次制裁パッケージの規模と内訳
今回のパッケージでは、個人48人と団体170社の合計218件が制裁リストに追加された。これは過去4年で最大の追加件数にあたる。
金融分野では、94の銀行・金融機関に資産凍結と取引禁止が科され、さらに33のロシアの信用機関に取引禁止が拡大された。ロシアの決済システムSPFSに接続するキルギスの銀行を含む非ロシア系銀行4行も対象に加わっている。加えて、制裁逃れの原油輸送に使われるいわゆる「シャドーフリート」の船舶41隻が新たにリストに載った。(参考: crypto.news「EU targets 14 crypto operators and 94 banks in Russia sanctions」)
EU外務・安全保障政策上級代表のカヤ・カラス氏は、今回の措置について「我々は100を超える銀行および暗号資産事業者、ロシアのシャドーフリート40隻超、ロシアとベラルーシの複数の製油所を標的にしている」と述べた。(参考: CoinDesk「EU Hits Russia With Massive 21st Sanctions Package」)
指定された暗号資産14社と6つの法域
取引禁止の対象となった暗号資産関連事業者は14社で、いずれもロシア国外に拠点を置く。ブロックチェーン分析企業のChainalysisとTRM Labsが公表した一覧によると、内訳は次の通り。
| 事業者名 | 備考 |
|---|---|
| HTX(Huobi Global SA) | 大手取引所。2026年5月に英国が先行して指定 |
| EXMO Ltd | 取引所 |
| BitPapa | P2P取引サービス |
| Rapira | 取引・交換サービス |
| Exnode / Exnode Pay(Arvix) | 決済・集約サービス |
| Aifory Pro(Sooty Ltd.) | 交換サービス |
| ABCeX(Nueva Cryptologia S.A.S DE C.V.) | 交換サービス |
| WhiteBird | ベラルーシ関連の交換サービス |
| NoOnecrypto INC. | P2P取引サービス |
| Tradex(Brightum LLC) | 交換サービス |
| Monease Ltd | 決済サービス |
| A7 Nigeria / A7 Africa | A7越境決済ネットワークの関連会社 |
| PilotFinance Ltd | 金融サービス |
これらの事業者が所在するのはジョージア、パナマ、アラブ首長国連邦(UAE)、マーシャル諸島、キルギス、ベラルーシの6法域である。EU理事会は、これらを「既存の金融規制を迂回するためにロシアが利用したサービスに関連する」プラットフォームと位置づけた。(参考: Chainalysis「EU’s 21st Russia Sanctions Package Targets Crypto Platforms」)
第三国を国単位で遮断する新たな法的手段
今回のパッケージで制度面の変更として大きいのは、EUが暗号資産サービスを国単位で遮断できる法的手段を初めて設けた点である。従来の制裁は個別の事業者を名指しして取引を禁じる方式だったが、新しい枠組みでは、ロシアの制裁回避に使われる事業者を抱える第三国について、その国の暗号資産サービスプロバイダーとEU事業者との取引を包括的に禁止できる。
TRM Labsによると、欧州委員会はこの仕組みを「EU制裁の回避を助けるプラットフォームを抱える国に対する強い抑止力になる」と説明している。制裁対象を1社ずつ追加しても、同種の事業者が同じ法域内に次々と現れる「もぐら叩き」の状況が続いてきたことが背景にある。(参考: TRM Labs「EU’s 21st Package Extends Crypto Sanctions to Third Countries」)
ただし、EUが実際にどの国に対してこの手段を発動するのか、発動の判断基準は何かは、現時点で公表された資料からは確認できていない。
HTXの指定と同社の主張
14社のうち市場への影響が最も大きいとみられるのがHTXである。EUの取引禁止は2026年8月23日から適用され、資産凍結までは科されていない。HTXは2025年に3.3兆ドルの取引高を報告した大手取引所で、これまでに制裁対象となった暗号資産事業者とは規模が異なる。(参考: Decrypt「EU Names Justin Sun’s HTX in Russia Sanctions, Two Months After UK」)
HTXをめぐる経緯
2025年
ロシア系取引所Garantexへの取締り後、資金の流れがA7越境決済ネットワークに移ったとされる。
2026年5月
英国がHuobi Globalを制裁指定。英当局は15億ドル超がクレムリン側に流れ、A7ネットワークにサービスを提供したと指摘した。
2026年5月24日
EUの第20次制裁が発効。
2026年7月23日
EUが第21次制裁を採択し、HTXを含む暗号資産14社を指定。
2026年8月23日
HTXに対するEU域内の取引禁止が適用開始(予定)。
HTXは5月の英国指定に対して、制裁対象のHuobi Global S.A.は「オンライン上のHTX取引所とは別の法人」であり、指定は同取引所に「影響を及ぼさないし、及ぼすべきでもない」と反論した。ウォレットの動きについても「通常のセキュリティ上の運用」だと説明している。7月24日時点で、EUの措置に対するHTXおよびEXMOの公式発表は確認されていない。(参考: The Crypto Times「EU Sanctions HTX Crypto Exchange in Sweeping New Russia Package」)
A7ネットワークとルーブル建てステーブルコインA7A5
今回の指定リストにはA7 NigeriaとA7 Africaが含まれる。Chainalysisの調査によると、ルーブル連動ステーブルコインA7A5が流通するA7越境決済ネットワークは、これまでに約1200億ドル相当を処理したとされる。
A7A5は、西側の制裁下にあるロシアのプロムスビャジバンク(PSB)の預金を裏付けとし、2025年前半にキルギスで発行が始まったルーブル建てステーブルコイン(法定通貨に価値を連動させた暗号資産)である。準備資産がキルギスやロシアの銀行網に置かれているため、米英EUの執行が直接及びにくい構造になっている。
もっとも、公表される取引量には疑義が示されている。発行体は2026年上半期に344億ドルの取引高があったとするが、ブロックチェーン分析企業のEllipticとTRM Labsは、その約34%が同一資金を循環させる見せかけの取引だと分析した。さらに、主要な取引の場だったGarantex、続くGrinexが制裁を受けたことで、取引量はピーク時から約96%減少したと報じられている。(参考: CoinDesk「This sanctioned Russian stablecoin claims it processes billions, but blockchain analysts disagree」)
用語の整理
A7A5:ロシアのプロムスビャジバンクの預金を裏付けとするルーブル連動ステーブルコイン。2025年前半にキルギスで発行開始。
SPFS:ロシア中央銀行が運営する金融メッセージ伝送システム。国際送金網SWIFTからの排除に対応して整備された。
シャドーフリート:所有関係や保険を不透明にしたまま制裁対象の原油などを輸送する船舶群。
第三国:ここではEU加盟国でもロシアでもない国を指す。今回の新制度はこうした国に所在する事業者を対象とする。
今後の論点:法域間のずれと事業者の実務対応
第一の論点は、法域ごとの対応のずれである。英国は5月、EUは7月にHTXを指定した一方、米財務省外国資産管理室(OFAC)は同社を指定していない。同じ事業者について国・地域によって扱いが異なる状態が続けば、国際的に事業を展開する取引所やカストディ事業者は、顧客の所在地ごとに異なる遮断ルールを運用する必要が生じる。
第二に、アドレス単位の遮断が機能しにくい点がある。TRM Labsは、英国の指定後にHTX関連の入金アドレスが複数チェーンにまたがって頻繁に切り替わり、「一部のアドレスはわずか数時間だけ稼働し、その後入れ替えられた」と報告した。静的なブロックリストは短時間で陳腐化するため、事業者側は継続的な監視への切り替えを迫られる。
第三に、一般利用者への波及がある。オンチェーン調査で知られるZachXBT氏は、HTXがアジアの個人顧客を多く抱えることから、資金の「汚染」の広がりが深刻だと指摘した。取引所のOKXは、制裁を受けたプラットフォームとの間で価格差を狙った送金を繰り返す利用者に対し「こうした行為は控えてほしい」と呼びかけ、アカウントの監視対象になり得ると警告している。(参考: CryptoSlate「EU expands HTX crackdown as Russia-linked crypto network keeps shifting its financial rails」)
編集部の見方では、今回の措置で重要なのは指定件数よりも国単位の遮断という枠組みの新設である。根拠として、EU自身がこれを個社指定の限界を補う抑止手段と位置づけていること、そして過去の制裁で事業者が同一法域内に次々と再構築されてきた経緯がある。実際に発動されるかどうかは今後の運用を見る必要がある。
出典
- CoinDesk — EU Hits Russia With Massive 21st Sanctions Package Targeting $120B Crypto Network
- Chainalysis — EU’s 21st Russia Sanctions Package Targets Crypto Platforms
- TRM Labs — EU’s 21st Package Extends Crypto Sanctions to Third Countries
- crypto.news — EU targets 14 crypto operators and 94 banks in Russia sanctions
- Decrypt — EU Names Justin Sun’s HTX in Russia Sanctions, Two Months After UK
- CryptoSlate — EU expands HTX crackdown as Russia-linked crypto network keeps shifting its financial rails
- CoinDesk — This sanctioned Russian stablecoin claims it processes billions, but blockchain analysts disagree
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本を割り込む可能性があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。制裁対象事業者に関する記述は執筆時点で公表されている情報に基づくもので、適用範囲や発効日は今後変更される可能性があります。
なお、本記事はAIを活用して作成しています。正確性に努めていますが、内容が事実と異なる可能性があります。重要な情報はご自身で公式・一次情報をご確認ください。


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