パキスタンの仮想資産規制庁(PVARA)は8月22日、仮想資産法2026(Virtual Assets Act 2026)に基づく認可規則を告示し、暗号資産事業者向けの申請受付を開始した。同法の施行前から国内で営業していた事業者は、9月5日までに無異議証明書(NOC)の申請を提出しなければ、営業の停止を求められる。
この記事のポイント
- PVARAが交換業・カストディ・デリバティブなど10区分のライセンス制度を告示し、申請ポータルを開設した。
- 2026年3月5日の法施行前から営業していた既存事業者は、9月5日までにNOCを申請しなければ事業を停止しなければならない。
- 4月の中央銀行通達で8年続いた銀行取引の制限が解かれた。BinanceとHTXは2025年12月にNOCを取得済みだが、当局は「本免許ではない」と説明している。
10区分のライセンスと事業者に課される義務
今回告示された規則は、仮想資産サービスを10の区分に分けて免許を出す仕組みになっている。交換業(取引所)、カストディ(保管)、ブローカー・ディーラー、助言業、レンディングおよびボローイング、デリバティブ、資産運用、送金・決済、トークンの発行、マイニング関連サービスの10類型である。(参考: DAWN「Crypto operators given September 5 deadline to seek NOCs」)
申請者は会社法2017に基づいてパキスタン国内に法人を設立し、取得する区分に応じた最低払込資本金を満たす必要がある。取締役や主要役職者にはフィット・アンド・プロパー審査が課される。
体制面では、アンチマネーロンダリング(資金洗浄対策)の内部管理、取引モニタリング、サイバーセキュリティ対策、業務継続計画の整備が求められる。顧客資産については、自己資産との分別管理が義務づけられ、顧客の書面による同意なく貸し出したり担保に差し入れたりすることはできない。(参考: crypto.news「Pakistan opens VASP licensing as new crypto rules take effect」)
用語の整理
PVARA/パキスタン仮想資産規制庁。暗号資産事業者の免許付与と監督を担う独立規制機関。
NOC(無異議証明書)/本免許の前段階として当局が交付する予備的な承認。これ自体では営業できない。
VASP/Virtual Asset Service Provider。取引所や保管業者など、暗号資産に関わるサービスを提供する事業者の総称。
規制サンドボックス/当局の監督下で、期間や取扱額に上限を設けて新しいサービスを試験的に提供できる枠組み。
9月5日のNOC期限と2つの申請ルート
仮想資産法2026の第70条は、同法の施行日である2026年3月5日より前から仮想資産サービスを提供していた事業者に対し、施行から6か月以内にNOCを申請するよう求めている。この期限が9月5日にあたる。
PVARAはプレスリリースで「既存の仮想資産サービス提供者は2026年9月5日までにNOC申請を提出しなければならず、さもなければ事業を停止しなければならない」と述べた。期限を過ぎて申請せずに営業を続けることは同法上の違反にあたるとしている。(参考: Decrypt「Pakistan Sets September 5 Deadline for Crypto Firms to Register」)
申請の入り口は2つある。既存事業者向けの移行措置であるNOCルートと、新規事業者向けの規制サンドボックスである。
| 項目 | NOCルート(移行措置) | 規制サンドボックス |
|---|---|---|
| 対象 | 2026年3月5日より前から営業していた事業者 | これから参入する新規事業者 |
| 期限 | 2026年9月5日までに申請 | 期限の定めなし |
| 主な手順 | 事業計画・法人資料の提出、金融情報機関(FMU)への登録、国内法人の設立、本免許の申請 | 取扱範囲を限定した試験運用、報告義務と資産保全要件の遵守を経て本免許を申請 |
| 未対応の場合 | 営業停止。無申請での継続は法違反 | 免許なしでの提供は不可 |
銀行規制の解除から規則告示までの経緯
パキスタンは長らく暗号資産に否定的だった。国立銀行(中央銀行)が金融機関に暗号資産関連の取り扱いを禁じてきたため、事業者は正規の銀行口座を持てない状態が8年続いた。方針が転換したのは2025年に入ってからである。
2025年7月大統領令によりPVARAが設立される
2025年12月PVARAがBinanceとHTXにNOCを交付。同月、政府はBinanceと最大20億ドル規模の国有資産トークン化を検討する覚書を締結
2026年3月5日議会が可決した仮想資産法2026が施行され、PVARAが法律に基づく常設機関となる
2026年4月14日国立銀行が通達第10号を発出し、PVARA認可事業者への銀行サービス提供を容認
2026年6月11日〜7月2日認可規則案について意見公募を実施
2026年8月22日認可規則を告示し、申請ポータルを開設
2026年9月5日既存事業者のNOC申請期限
4月の通達は、銀行に対して認可VASPの顧客資金を無利息のルピー建て専用口座で分別管理すること、資金の混同を防ぐこと、AMLと本人確認(KYC)の基準を適用することを求めている。同時に、銀行が自己資本や預金を用いて暗号資産そのものを売買・保有することは引き続き禁じられている。(参考: DAWN「Crypto operators given September 5 deadline to seek NOCs」)
制度整備を急ぐ背景には、国内の利用実態がある。ブロックチェーン分析企業Chainalysisの2025年グローバル暗号資産導入指数で、パキスタンはインド、米国に次ぐ3位に入った。前年の9位から順位を上げている。(参考: Chainalysis「The 2025 Global Adoption Index」)
当局の説明とBinance・HTXの位置づけ
PVARA会長で担当国務相を兼ねるビラル・ビン・サキブ氏は、規則告示にあたって「若い世代のパキスタン人が、国家の準備が整う前にこの市場をつくり上げた。今日、国家がそれに追いついた」と述べた。(参考: Geo News「Pakistan launches virtual asset licensing regime, sets September 5 deadline」)
同氏はまた、顧客資産の扱いについて「認可を受けた仮想資産サービス提供者は、顧客の保有資産を自社の資産と分別しなければならず、書面による同意なしにそれを貸し出したり担保に入れたりすることはできない。プラットフォームが破綻した場合にも手をつけられない」と説明している。PVARAは「6か月足らずで、基本法から規則の告示、そして申請受付の開始までを進めた」としている。
BinanceとHTXは2025年12月にNOCの交付を受けており、国内法人の設立と本免許の申請に進める立場にある。ただしサキブ氏は当時、これらのNOCについて「包括的な承認ではなく、リスクを抑えた段階的・監督付きの参入枠組みにおける第一歩だ」と述べ、両社が現時点で国内営業を認められたわけではないと明確にしていた。(参考: DAWN「NOCs to Binance, HTX not ‘blanket approvals’」)
今後の論点
第1に、9月5日までにどれだけの既存事業者が申請にたどり着くかである。パキスタンでは規制の空白期に海外取引所やP2P取引が広く使われてきた経緯があり、国内法人の設立と資本要件を満たせない小規模事業者が撤退を選ぶ可能性がある。撤退が相次げば、利用者が非公式なチャネルへ移る事態も考えられる。
第2に、本免許の交付時期と審査基準の運用である。今回の告示は申請の入り口を開いたにとどまり、区分ごとの最低払込資本金や審査に要する期間といった実務の細部は、今後の運用を通じて明らかになる。BinanceやHTXが実際にいつ営業を開始できるかも、現時点では確認できていない。
第3に、政府が掲げるトークン化構想との整合である。2025年12月の覚書では、国債や国庫短期証券、商品準備といった国有資産のトークン化を最大20億ドル規模で検討するとされ、財務相のムハンマド・アウランガゼブ氏は「次の段階は実行であり、我々は速さと質をもって結果を出すことに全力を尽くす」と述べていた。編集部の見方では、こうした構想が動くには民間VASPの認可が先に固まる必要があり、9月5日以降の免許審査の進み方が試金石になる(根拠: 免許を得た事業者でなければ国内で保管・取引の受け皿を担えないため)。(参考: Arab News「Pakistan signs agreement with Binance to explore ‘tokenization’ of up to $2 billion assets」)
出典
- DAWN「Crypto operators given September 5 deadline to seek NOCs」
- Decrypt「Pakistan Sets September 5 Deadline for Crypto Firms to Register」
- crypto.news「Pakistan opens VASP licensing as new crypto rules take effect」
- The Express Tribune「Virtual assets licensing launched」
- Geo News「Pakistan launches virtual asset licensing regime, sets September 5 deadline」
- DAWN「NOCs to Binance, HTX not ‘blanket approvals’ but first step under supervised entry framework」
- Chainalysis「The 2025 Global Adoption Index」
- Arab News「Pakistan signs agreement with Binance to explore ‘tokenization’ of up to $2 billion assets」
- Pakistan Virtual Assets Regulatory Authority(公式サイト)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本を割り込む可能性があります。規制の内容や施行状況は国・地域によって異なり、変更される場合があります。投資の判断はご自身の責任で行ってください。なお、本記事はAIを活用して作成しています。正確性に努めていますが、内容が事実と異なる可能性があります。重要な情報はご自身で公式・一次情報をご確認ください。


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